私の司法書士事務所には年に2、3回と頻度は低いものの、生活保護受給者の方から、または今から生活保護を受給されようとする方から「生活保護受給者でもクレジットカードは取得できるか?」または「生活保護を受給をしたら手持ちのクレジットカードは解約しないといけないのか?」と相談される事があります。
今回はこの話題について書いてみたいと思います。
よくヤフー知恵袋等のQ&Aサイトに「生活保護受給者の借金は違法」とか「生活保護を受けてる間はクレジットカードを取得するのも違法であるし、また持っていても違法である」と書かれています。
本当にそうなんでしょうか?
生活保護とは生活保護法の元に行われるものですが、
生活保護法のどこに借金が違法であるとか、クレジットカードの取得や所持が違法であると書いてあるのでしょうか?
そんな事どこにも明確に書いてません。
ただ、生活保護法には以下のような条文があります。
生活保護法第60条(生活上の義務)
被保護者は、常に、能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図り、その他生活の維持、向上に努めなければならない。
この条文のを守っていれば自ずと「借金はしないもの」であるから、
生活保護受給下での借金は生活保護法60条に抵触して違法であるとかクレジットカードも一回払いであっても借金であることには間違いないので生活保護法60条に抵触して違法であるとか言われるわけです。
また、生活保護法には以下のような条文もあります。
生活保護法第61条(届出の義務)
被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき(略)、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。
借金をしてしまえば、生計の状況に変動があるので、その報告をする義務が発生します。
そして借金を報告をすれば、60条に抵触するので違法というわけです。
そもそも生活保護とは食うか食わないかの人へ国が保護をするという目的で作られたものなので、
そんな状態の生活保護受給者が借金をしたり、クレジットカードを使ったりする想定で作られてないので明確に条文として書いてないんですね。
ではクレジットカードを使わず所持だけだとしたら違法なのかというと、
所持だけでは借金してる事にはならず、なんら違法ではありませんが、
生活保護を審査している役所から言わせると違法だと言って解約させるケースが多いようです。
中にはケースワーカーや役所から現時点でのクレジットカードの明細を見られ、
プロバイダー料金だけならこのままでいいといわれるケースがあるので、これは地域差があるのだと思います。
(PCは生活必需品と認められてます、PCが出来ないと復職が難しい場合がある為です)
クレジットカードの所持自体が違法ではなくても生活保護を申請する役所が違法だと指導してくれば、
従わない場合は生活保護申請が下りない事や、生活保護受給を打ち切られる場合もあるでしょう。
いわゆる「お上」というのはそんなものです。
以上が役所やケースワーカーの視点からみた生活保護受給者のクレジットカードになります。
クレジットカード会社からみた生活保護受給者とは?
では、今度はクレジットカード会社からみた生活保護受給者の立場を説明します。
今回の記事のタイトルでもある「生活保護受給者でもクレジットカードは作れますか?」の質問ですが、
答えから言いますと、職業欄に「生活保護」と書くと100%審査には通りません。
生活保護受給者という属性の方はクレジットカードの審査には通らない属性の方です。
私がクレジットカードのコールセンターにいたころ、
よく生活保護受給者の方でクレジットカードの審査に落ちた方から「障害者年金を貰ってる知り合いのAはクレジットカードの審査に通ったのに生活保護の自分が生活保護を理由に審査に落ちるのは納得いかない、差別だ!」と電話を受ける事がありました。
お客さまに「生活保護が理由で」とは一言もこちらは言ってません、
そもそもクレジットカードの審査に落ちた理由は絶対に言えませんので。
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このような事は差別ではなく「区別」なんです。
クレジットカード会社は慈善団体ではありません。
普通の営利法人であるのでお客さまを「区別」して当然です。
大事な会社のお金を一時的であれ、クレジットカードを通して貸し出すわけですから。
クレジットカードのコールセンターで長年勤務してきた私の経験から言わせて頂きますと、
同じように国から支給されている年金と生活保護では属性が全然違うんですね。
障害年金でも年金は年金です、支給額に差があるものの、安定した収入とも言えます。
ですから障害年金を受給されている方でもクレジットカードの審査に通ることはありえますし、実際におられました。
一方、生活保護とは受給者が生存する限り支給される性質のものではありません。
基本的に生活保護とは一時避難所みたいなものであって、
自身の状態がよくなれば、勤労してもらって、生活保護から抜けてもらうというものですから、
安定した収入とは呼べませんのでクレジットカードの審査に通らないのです。
また、「役所やケースワーカーの視点からみた生活保護受給者のクレジットカード」の項目でお話しましたが、
クレジットカードを所持していても、所持だけなら違法ではありませんが、
そもそも無職になって生活保護を受けるようになった状態になったらその事実をクレジットカード会社に報告しないといけません。
この「報告をしないといけない」というのはクレジットカードの利用規約にしっかり書いてありますので、
職を変える度に、また無職になればその旨を報告する義務が利用者にはあります。
当然、その事を報告すればクレジットカードの利用は停止されます。
ということは結局、生活保護受給下でのクレジットカードの所持も厳密に言えば駄目ということになります。
私のクレジットカード会社での経験からして、
無職と申請してクレジットカードを利用停止、解約になった方が復職して再度申込申請して再発行されたケースは見たことがありますが、
無職になった事を黙っててバレた時に利用停止、解約になった方が復職しても再度申込審査が通ったのを見たことがありません。
キャッシングをしてるわけでもないので、年収証明書も源泉徴収票も提出しない、無職になった事がバレる事があるわけないと思ってるあなた、考えが甘いです。
クレジットカード会社は無作為にですが、DM(宣伝、販売行為)と称して在籍していると申込書にかかれている勤務先に電話をすることがあります。
この時に実はもう退職してることが判明することが少なからずあります。
だから無職になっても絶対に100%バレないということはありえないんですね。
クレジットカードの利用者にはこのような報告義務あってクレジットカードが発行されているものなので、
「無職になってもバレないから平気だ」と甘く考えない方がいいと思います。